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 ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインの7原則

The Center for Universal Design, NC State University による。)


  1. 1.どんな人でも公平に使えること(公平な利用)
    Equitable use



  1. 2.使う上での柔軟性があること(利用における柔軟性)
    Flexibility in use



  1. 3.使い方が簡単で自明であること(単純で直感的な利用)
    Simple and intuitive



  1. 4.必要な情報がすぐに分かること(認知できる情報)
    Perceptible information



  1. 5.うっかりミスを許容できること(失敗に対する寛大さ)
    Tolerance for error



  1. 6.身体への過度な負担を必要としないこと(少ない身体的な努力)
    Low physical effort



  1. 7.アクセスや利用のための十分な大きさと空間が確保されていること

        (接近や利用のためのサイズと空間)
         Size and space for approach and use

ユニバーサルデザインとは、文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障がい・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)のことを言います。(Wikipediaより引用)

2.使う上での柔軟性があること(利用における柔軟性) 受け皿の広いコイン投入口

4.必要な情報がすぐに分かること(認知できる情報)

案内標識

3.使い方が簡単で自明であること(単純で直感的な利用)

シャンプーとリンスの判別用凹凸

ユニバーサルデザインの大きなポイントは、対象が障がい者を含む高齢者などの社会的弱者である『バリアフリー』とは違い、『できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザイン』にすることです。

障がいなどをもつ社会的弱者の人々とって使いやすいデザイン


他のすべての人々にとっても使いやすいデザイン

 学校教育のユニバーサルデザイン化

ユニバーサルデザインの視点に立って、学校教育にその考えを取り入れていこうという取り組みが始まっています。


東京都日野市の公立小中学校と共に、学校教育のユニバーサルデザインを研究している、明星大学の小貫悟先生によると、

発達障がいのある子とって

参加しやすい学校、わかりやすい授業


他のすべての子にとっても

参加しやすい学校、わかりやすい授業

である、という観点に立って、発達障がいのある子どもたちを包み込む「インクルージブ教育」の実現を目指した授業改革を実践されています。

ポイントは、あくまでユニバーサルデザイン的な立場であり、バリアフリーではないということ。

つまり、発達障がいの子どもたちのために特化された授業(難易度を下げる、別課題をあたえる、個別授業や取り出し授業で補填するなど)を行うのではなく、発達障がいのある子どもも、学習能力の高い子どもも、両者にとって分かりやすく楽しい授業をおこなうことが、授業のユニバーサルデザイン化であるということです。

 子どもの特徴を知りましょう

バリアフリー的な個別配慮を行わないのではなく、ユニバーサルデザイン化された授業では行わないということです。詳しくは後述します。

発達障がいをかかえた子どもたちに共通して言える特徴の一つが、
状況依存性
です。

学習障がい(LD)を持つ子どもは、学習の仕方という状況に左右されます。例えば、聴覚による学習が苦手なこどもに「よく聞きなさい」という指示は適切ではありません。視覚的な指示を心がけたり、目で見て分かる教材を取り入れたりすることが必要です。

注意欠陥・多動性障がい(ADHD)の子どもは、刺激量に大きく左右されます。まわりの子どもたちの声などの聴覚刺激、掲示物や板書などの視覚刺激など、注意欠陥や多動を引き起こす増悪因子が刺激となっています。

高機能自閉症の子どもたちは、焦点が1点に集中してしまったり、物事を整理して考えることが苦手です。また、コミュニケーションを上手にとることができないこともあるので、あいまいな指示や多くの情報を一度に伝えると、パニックに陥ったり、理解できなかったりすることがあります。

 教室環境のユニバーサルデザイン

 授業のユニバーサルデザイン

発達障がいをかかえた子どもたちは、状況依存性という特徴があり、その子をとりまく環境に大きく影響を受けます。一日の大半を過ごす教室の環境を整備することは、発達障がいをかかえた子どもたちだけではなく、すべての子どもたちにとってもとても大切です。

 場の構造化

  1. 箇条書き項目ポイント


1.ものの一つ一つに、「しまう場所」があるか

2.子どもにも一目でわかる「目印」があるか

3.視覚的な「お手本」が用意されているか

机がつねに同じ位置になるような配慮。

高機能自閉症の子どもの中には、曲がっていることに違和感を感じる子もいるので、碁盤の目のように垂直に整えるとよいこともあります。

一つ一つのものに居場所、しまう場所を与える。

しまい方や整理の仕方を、目で見てわかりやすく伝えることが大切です。写真などで手本となる整理の仕方を掲示するとさらによいですね。

授業のときには、掲示物に目隠しを。

教室前面の掲示板は、授業に必要のない時にはカーテンで目隠しをすると刺激をぐっと減らすことができます。

棚にはカーテンで目隠しをする。

忙しい毎日、棚の中はごちゃごちゃとしがちです。教室の棚にカーテンを一枚つけるだけで、すっきりとさせることができます。

工具の形(影)が壁に描かれている整理術。

もののシルエットが壁に描かれているので、視覚的にも、もとの場所に戻しやすい工夫です。

番号も工具と対応して掲示されているので、間違えることもなく整理できます。

 刺激量の調整

  1. 箇条書き項目ポイント


1.注意散漫の原因因子をおさえる配慮があるか

2.教室前面は、最小限の掲示になっているか

3.席順や座席の位置は最適か

教室の前面は、極力すっきりとさせる。

黒板周辺は、一番視野に入りやすいです。黒板まわりをすっきりさせることで、刺激量を抑えることができます。

気になる子の座席位置は慎重に。

席順をくじ引きや子ども任せにしていませんか。友だちとの距離も刺激量に大きく関係します。

発達障がいをかかえた子どもたちにとっても分かりやすく、楽しい授業を行うための授業改善は、学校教育のユニバーサルデザインの中でも最も大切です。細かい指導法などは、多くの書籍が既に出版されていますので参考にしてください。ここでは、指導の大もとになる考えを紹介します。

 時間の構造化

  1. 箇条書き項目ポイント


1.授業全体の見通しをもてる手だてがあるか

2.時間の区切りが明確であるか

3.今すべきことが分かる手だてがあるか

授業の最初に、この1時間がどのような流れで行われるかの全体を明確にしておくことで、見通しがもてず不安になってしまう子どもに安心感を与えることができます。

いまから行う活動は何分間で行うのか、終了まであと何分残っているのか、時間の区切りを子どもたちに知らせることも大切です。iPhoneのミラーリングを活用する方法もあります。

指示を口頭だけで行うと、聞き逃した子どもは何をしていいのか分からず「迷子」になってしまいます。

今すべきことを黒板に書いておけば、聞き逃した子どもも活動に参加することができます。

 焦点化

  1. 箇条書き項目ポイント


1.1時間の授業の「ねらい」を絞る

2.授業の山場を設定する

3.活動を「ねらい」に直結させる

1時間の授業の中での「ねらい」を絞ることはとても大切です。ねらいが漠然としていたり、多くを1時間に盛り込んでしまうと、目標も曖昧になりがちだからです。


教材のもつ特性や、子どもの状況をよく理解した上で、身につけさせたい力を特定し、その中からねらいを絞ることが重要です。

子どもから「そうだったのか!」「ひらめいた!」「なるほど!」といった言葉を引き出せたら、その授業はほとんど成功と言っていいでしょう。子どものひらめきをどこで引き出すか、『山場』を設定することが大切です。

授業の山場に向かうために、さまざまな活動を盛り込みながら構造的に授業をつくっていきます。その一つ一つの活動がねらいに向かって直結するように配慮していくことが必要です。

 視覚化

  1. 箇条書き項目ポイント


1.実物や半具体物の提示で課題を明確にする

2.実物などの提示で意欲を引き出す

3.図や表などにまとめ、直感的理解につなげる

実物を見ることで、イメージをつかみにくい子どもや理解がゆっくりな子どもでも、視覚的に理解を深めることができます。ICT機器の有効活用も効果的です。

実際にやってみる、実物で体験することは、子どもたちにとって魅力的で、意欲をもって取り組むことができます。

図をつかって直感的に量感がつかめるような配慮を行うことで、言葉だけでは理解できない子どもにとっても分かりやすい授業になります。

 共有化

  1. 箇条書き項目ポイント


1.分からないことがある子も参加できる

2.どの子どもも発言のチャンスがある

3.考える時間を意図的に取り入れる

分からないことがあったとき、多くの子どもたちが「先生や友だちに聞くことができず、そのままにしてしまう」という経験をしています。分からないとき、困ったときに助言をもらうための具体的な「ルール」「方法」をクラスで決めておくことも大切です。

バリアフリー的な対応の中に、「取り出し授業」などの個別配慮があります。どの子どもにとっても分かりやすいユニバーサルデザイン的な配慮をした授業を計画する中でも、課題の達成が難しい状況もあります。授業の工夫を最大限に考えた上で、個への配慮として「取り出し授業」などを行ったり、子ども一人ひとりに特化した補充指導を行ったりすることはとても重要です。それらの指導を経て、ユニバーサルデザイン化された授業を計画すれば、一人ひとりの課題をさらに明確にした授業プランを作ることができます。

ペア学習を効果的に取り入れることで、子どもたち一人ひとりが自分の意見を発表したり、話し合える機会を保障します。

意見の共有をするためには、自分の考えをもつための時間を確保してあげることが必要です。

 ルールの明確化

  1. 箇条書き項目ポイント


1.全員が実行可能なルールか

2.視覚的に分かりやすく掲示してあるか

3.できた、できなかったの評価が明確か

発達障がいのある子どもたちは、「あたりまえ」と思われがちなことを理解することが難しいことがあります。ルールは具体的に、『正解』を示すようにしましょう。

当番活動などの掲示は、誰が見てもわかりやすく、実行しやすい掲示を心がけるようにします。また、「仕事が済んだらカードをひっくり返す」のようなルールを取り入れると、進捗状況も一目で分かり便利です。