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 世界各国の法定年間給与の比較

下のグラフは、OECD『図表で見る教育2013(Education at a Glance)による、2011年のOECD主要加盟国の年間給与(法定給与)の比較です。


青いグラフは初任者(採用1年目)の年間給与、緑のグラフは15年経験者の年間給与を表しています。

 世界各国の法定勤務時間の比較

単位:USドル/年間

15年経験者(緑のグラフ)を比較するとOECDの平均年収を上回っていますが、注目すべきは初任者の青いグラフです。OECDの平均である30,216ドルよりも4000ドル以上低い水準です。


2011年の日本のPPPレート(1ドル=約106円)で計算すると、日本の初任者の平均年収はおよそ276万円という計算になります。

それでは、世界各国の年間の法定勤務時間はどのくらいなのでしょうか。下のグラフは、同調査による各国の法定勤務時間を比較したグラフです。

単位:時間/年間

OECD加盟各国と比較しても、日本の教員は勤務時間が長いといえます。OECDの平均と比較すると、年間で200時間以上も長く働いているということになります。


しかし、これは『法定勤務時間』であるということをわすれてはいけません。つまり、8時30分から17時の定時まで、途中の休憩も含めた1日『7時間45分』を20日/月、これを12ヶ月分として計算した数字です。


もちろん、多くの教員が時間外勤務や家庭に持ち帰っての仕事を余儀なくされており、実際の勤務時間はこれを大きく越えていることは明らかです。

 1時間あたりの給与(時給)の世界比較

それでは、世界各国の初任給を法定勤務時間で割った1時間当たりの給与(時給)を比較してみましょう。

日本の初任者の1時間当たりの給与(時給)は、OECD加盟各国と比較すると、4ドル以上も低い事が分かります。しかも、比較した主要な加盟国のどの国よりも低い水準です。 2011年の日本のPPPレート(1ドル=約106円)で計算すると、1,462円となり、場合によっては大学生がアルバイトで行う家庭教師の時給よりも低いという結果です。


しかし、わすれてはならないのは、この結果が『法定勤務時間』で割った金額であるということです。8時30分に学校に到着し、勤務途中に45分の休憩を取り、5時に退勤している教員が、一体どれだけいるでしょう。


新聞報道による『自宅に持ち帰った仕事も含めて、月に残業95時間/月』を加味して計算すると、年間実質勤務時間は3,023時間。これを初任者の年収で割った実質時給は8.6ドル。 2011年の日本のPPPレート(1ドル=約106円)で計算するとおよそ912円ということになります。仮に、2011年の平均為替(1ドル=約79円)で計算すると、およそ679円という驚きの水準であることが分かります。


土日にサービス出勤をしたり、深夜まで教材研究をしたりする教員のなかには、この『月95時間』を上回る残業を行っている方も少なくないのではないかと思います。

単位:ドル/時間

 今後の展望…

ここまで述べてきた数値には、一部実際とは異なる計算方法を用いており真実とは言いがたいですが、実際に日本の初任者を含む若手の教員の給与体系が非常に冷遇されていることは明らかです。


優秀な人材を誘致できない?

OECDによれば、日本の初等・中等教育の教員の初任給の低さは、優秀な人材を教職へと誘致する上で大きな課題になるだろうと警鐘を鳴らしています。その上、財務省からの給与削減が決まれば、さらに大きなマイナスとなりうる危険を孕んでいます。


実質給与の減少は、OECD加盟各国の中でも最悪水準

勤続15年の教員給与の変化を見ても、2000年を100とすると、2011年には91という減少率。OECD23カ国中22位という水準です。さらに、OECDの調査によれば、2009年以降、好況時においても大半の教員給与は他の分野の同じ学歴の労働者の給与より少ないという結果もでています。


勤務時間と待遇の改善を

夢を持って教員という職に就いても、うつなどの心の病で休職する教員が年間5,000人以上います。2010年の文部科学省の調査によれば、およそ900人の教員が病気(精神疾患)で離職しています。


教員の勤務時間と待遇の、早急な改善が求められていると感じています。